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2010年8月

3.住警器共同購入等の事例紹介 ~第1回~

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平成22年(1月~12月)における火災の概要

 消防庁では、平成21年度に「住宅用火災警報器の地域での普及活動展開手法の検討事業」を実施し、地域において住宅用火災警報器の普及に効果を挙げている「共同購入」の先進的事例等について、成功に繋がった活動や改善すべき点など具体的な経験に基づくポイント等を関係者からヒアリング等を行い調査しました。そして、当該事業の成果について、各地域における取組の参考となるよう、「地域における住宅用火災警報器共同購入等ノウハウ集」として取りまとめました。今月号から来年6月の住宅用火災警報器の全国的な義務化に向けて、消防本部等の参考としてもらうため、収集した事例を紹介していきます(8月号からは新コーナー『住警器Now! 』を設けて連載します)。第1回目は、岩手県矢巾町(取組主体:矢巾町婦人防火クラブ連絡協議会)の婦人(女性)防火クラブによる共同購入活動事例です。

(1)地域・取組み主体の概要

矢巾町は県庁所在地である盛岡市に隣接している。旧来は一戸建ての持ち家を中心とした構成であったが、盛岡市のベッドタウンとしての性格や、医科大及び病院の移転に伴う移転も多く、近年人口が増加しており、現在は約9,000世帯となっている。平成5年4月に結成された矢巾町婦人防火クラブ連絡協議会は、町内のコミュニティ(全40地区)で結成されている28地区の婦人防火クラブの連絡協議会で、各防火クラブは全戸加入を基本としている。

(2)共同購入の取組概要

町内全体を対象とした2回の共同購入を実施し、約1,700世帯が参加した。

取組主体:
人数等:
消防署等:
職員数:
地域:
人口/世帯数:
キーワード:
矢巾町婦人防火クラブ連絡協議会
約6,500 人
盛岡南消防署 矢巾分署
21人
岩手県矢巾町
27,185人/8,365世帯
●広報・周知
(テレビ・ラジオ等、新聞・広報誌等、掲示物・配布物、アンケート・回覧、戸別訪問)
●共同購入
●購入補助(現物支給等、一部世帯向け補助)
●設置支援
●設置確認(戸別訪問、設置済ステッカー)

(3)工夫点の紹介

工夫点①:他の地域での事例や制度についての情報収集
●実施内容
 岩手県全体の婦人防火クラブの会合において、他の自治体が先行して共同購入事業を実施していることを知り、矢巾町でも実施しようと考えた。
 また財団法人日本防火協会の「住宅用火災警報器設置促進活動等支援助成金」制度があることを知り、交付を受け、同助成金を広報活動等に活用して事業を開始した。
●ポイント
 婦人防火クラブにおける日常の活動や情報収集を活発に行っていることが、早くからの取組や助成金活用に繋 がっている。

工夫点②:消防署と婦人防火クラブの協力
●実施内容
 矢巾分署の職員数は21名、3交代で救急・消防及び火災予防の業務に当たっており、住警器普及活動にはなかなか手がまわらない。そこで、婦人防火クラブが主体的に普及活動や共同購入の実施に当たった。分署に事務局を置き、助言や連絡先(協議会電話番号が署内であるため)として機能した。
●ポイント
 職員数が少ない消防本部や分署における普及活動では、消防団や婦人防火クラブなどの地元の組織の活動及び署との協力関係が重要である。

工夫点③:様々な広報手段の利用、説明用ツールの作成
●実施内容
 住警器の設置義務や共同購入のお知らせは、町の広報(広報やはば)や岩手日報(新聞)のホームページ、有線放送(各家庭の電話に附設したスピーカーを用いた町内放送)による1日3回のお知らせなどのメディアを使用したもの、看板やのぼり、消防車や救急車に貼るマグネットシートなどの掲示物による広報手段を用いた。町の産業まつり(秋)や火災予防運動において、パネル設置や風船・ティッシュ等の配付も行った。
 その他、自治会等での説明会や戸別訪問用のリーフレットの作成を行った。また、活動が岩手日報、岩手日日新聞などの地域版で紹介されたことも周知のきっかけとなった。
●ポイント
 限られた予算の中で工夫をして、様々な手段を用いて広報活動を行っている。

工夫点④:戸別訪問時の他団体との協力、工夫
●実施内容
 戸別訪問時には、婦人防火クラブ員は制服である半てんを着用した。
 また、クラブの無い地区、高齢者・身障者宅などを訪問する際には、町会長や民生委員などの同行もお願いした。
●ポイント
 一般に、戸別訪問時には訪問販売業者等と間違えられることが懸念されているが、半てんの着用や地域の町会長や民生委員が同行することにより、そういった障がいを取り除いている。

工夫点⑤:共同購入による住警器の安価な提供
●実施内容
 町内外の販売業者に、価格、納品のスピード、アフターサービス等の観点も加えて入札してもらい、1社に絞り込んだ。あくまでも共同購入の斡旋であり、購入先については自治会や世帯で選定できるように柔軟に対応した。
●ポイント
 結果として町外の業者となったが、当時の市場価格より安価での購入が可能となった。

工夫点⑥:取付支援の実施
●実施内容
 高齢者等については、消防団員等による無償取付支援を行った。また、業者による取付けを希望する世帯については、1個500円で実施した。
●ポイント
 購入の際のパンフレットにあらかじめ「高齢者・身障者宅などは無償設置する」ことを記載し、自治会役員や民生委員からも声かけを行った。設置の際には、消防団の協力のもと、自治会役員や民生委員が立ち会って実施した。
 業者依頼する場合の価格も一律とするようあらかじめ協議し、パンフレットに記載した。

工夫点⑦:取付確認の実施(予定)
●実施内容
 現在進行中の取組であるが、設置済シールを全戸分準備した。婦人防火クラブの各地区の委員による全戸訪問により、設置状況を確認していく。同時に、改めて購入したいものについても取りまとめを行う。訪問結果は、地区ごとの住宅地図に色塗りしてわかりやすく取りまとめている。町全体での集計も実施している。
●ポイント
 共同購入以外で購入した世帯についても、全戸訪問・設置済シールを配付することにより、町全体の設置率を確認することが可能である。

(4)その他のポイント等

●苦労した点
 購入先が町外の業者となってしまったため町内の業者を優先したいとの声もあった点や、婦人防火クラブの無い地区での活動などが挙げられる。
 また、委員の任期が地区ごとに異なり、丁度この活動の時期に委員になった人には過大な負担がかかっているとのこと。地区により戸数が50戸~500戸と大きく異なり、集金・配付や設置確認などの全戸訪問に係る負担にも違いがある。

(5)今後の取組予定

●賃貸物件対策
 署が中心となって実施していく予定。方法としては、管理会社に問い合わせを行い、設置の有無を確認し、オーナーと協議の上設置してもらうことを想定している。
●高齢者等への対策
 平成22年度に町で予算が確保できたことと、財団法人日本防火協会からの実物支給の支援が受けられたことから、高齢者・身障者宅への無償設置用に数百個分を確保している。


 次回は、賃貸物件を管理している不動産業者の協同組合が積極的に共同購入を推進し、設置数を大きく伸ばした事例「賃貸住宅への住宅用火災警報器普及促進活動(取組主体:千葉市宅地建物取引業協同組合)」を紹介します。
 なお、本ノウハウ集は消防庁ホームページ(住宅防火情報)でもご覧いただけますので、参考としてください。
〈リンク先〉http://www.fdma.go.jp/html/life/juukei.html

総務省消防庁「消防の動き」2010年7月号より

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