住宅用火災警報器の普及に当たっては、購入の負担が障害となることが多くあります。
今回は、檜原村安全・安心むらづくり協議会(以下「協議会」という。)がけん引役となり、村に補助金制度を設立させ、自治会等を通じて住宅用火災警報器の100%設置を達成した事例を紹介します。
(総務省消防庁「消防の動き 2010年11月号」より)
(1)地域・取組み主体の概要
檜原村は、東京都の西端に位置し、広大な山間部(105.42k㎡)に木造家屋の集落が点在する高齢化の進んだ地域である。檜原村は健全な財政に支えられ、安全安心に関わる行政サービスが適切に行われている。このことから、当地域は、比較的災害・事故が少なく、都民の憩いの場として活用機会の多い地域でもある。
協議会は、檜原村安全・安心条例の施行(平成17年1月)に伴い設立された。警察署、消防署、消防団、自治会、保護司、民生・児童委員会、防犯協会、交通安全協会、教育委員会、小中学校、小中学校PTA、保育園、高齢者クラブなどの多様なメンバーで構成され、地域の安全安心に対する意識が高い。
(2)共同購入の取組概要
平成18年10月から住宅用火災警報器設置事業補助金交付要綱を施行し、手上げ方式で希望者を募集したが、住宅用火災警報器の理解が低かったこともあり、成果が上がらなかった。
このため、協議会は、村制119周年となる平成20年に全戸設置を目標とし、平成19年4月から自治会等による普及啓発のためのローラー作戦を開始した。
取組主体: 人数等: 消防署等: 職員数: 地域: 人口/世帯数: キーワード: |
檜原村安全・安心むらづくり協議会 15人 秋川消防署 57人 東京都檜原村 2,753人/996世帯 ●広報・周知(新聞・広報誌等、戸別訪問) ●購入補助(補助金等) ●設置支援 ●設置確認(図面・写真等提出) |
普及期 |
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展開期 |
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(3)工夫点の紹介
工夫点①:地域における日頃からの防災意識啓発
●実施内容
協議会は、檜原村安全・安心条例施行に伴い、平成17年1月に設置された。村、村民、警察等の関係機関が一体となって、犯罪・事故等を未然に防止し、安全で安心して暮らすことのできるむらづくりを推進することを目的として、年3回程度の会議を執り行う。
火災による死者を発生させないことを目的とし、住宅用火災警報器の設置促進を図るために、補助金制度を村に働きかけ、平成18年10月に「住宅用火災警報器設置事業補助金交付要綱」創設に尽力した。
住民への働きかけは、協議会が中心となり、各自治会等を通じて意識啓発と設置世帯の取りまとめを推進した。
●ポイント
協議会は、多様なメンバーで構成され、檜原村の防災行政の一翼を担っている。最も重要な自治会組織は26あり、村と協働で事業を推進している。
設置件数の推移
18年度 | 19年度 | 20年度 | 累計 | |||||
設置 家屋 | 設置 個数 | 設置 家屋 | 設置 個数 | 設置 家屋 | 設置 個数 | 設置 家屋 | 設置 個数 | |
設置 個数 | 85 | 404 | 566 | 2,745 | 237 | 1,304 | 888 | 4,453 |
補助 金額 (円) | 1,714,973 | 12,063,209 | 4,683,582 | 18,461,764 |
注:実質設置戸数:996(100%)、都からの助成交付金有
工夫点②:補助金制度の創設
●実施内容
「住宅用火災警報器設置事業補助金交付要綱」の補助金の額は、2万円を限度とし、65歳以上の一人世帯及び65歳以上のみの二人世帯においては、設置経費が2万円を超える場合は、その超えた経費の9割の額を加算し補助される。
平成18年度予算は400万円を計上したが、手上げ方式による希望者募集であったことから、補助金申請額は170万円程度に止まった。19年度は、共同購入方式により設置促進を図るために1,300万円計上のところ、補助金申請額は1,200万円程度と伸びた。21年2月末現在の設置個数及び補助金額は以下のとおり。
当初は、補助金制度の活用方法が十分に周知されなかったので、自治会等が補助金を活用しての設置、及び補助金の申請方法について普及した。購入方法は、個人での購入も可とし、自治会取りまとめの場合は、村から業者リストを提供した。
●ポイント
2万円の補助は、1戸あたり5個~6個の住宅用火災警報器を無料で取り付けることが可能であるので、自己負担すべき檜原村以外の地域とでは、取組の姿勢やスピードに格差が生じていると考えられる。
高額の補助金制度をいち早く創設し、住民の負担をなくしたことは、住宅用火災警報器の設置促進に大きく貢献している。
工夫点③:ローラー作戦(徹底した戸別訪問)
●実施内容
ローラー作戦は、自治会役員、消防団員(8地区)、消防署員(消防署長も参加)を動員して、26自治会の未設置世帯に対して住宅用火災警報器の必要性及び補助金制度を積極的にPRした。まずは自治会役員や消防団員等が設置を呼びかけ、その後設置済の世帯を住宅地図でチェックしたものを作成し、未設置世帯については消防署員が訪問して説明した。
また、村の広報誌を通じて延べ7回のPR、路線バスでのアナウンスを通じて、住民の理解の浸透を図った。
●ポイント
自治会、消防団が戸別訪問しての積極的、きめ細かな説明が奏功した。
工夫点④:写真を用いた設置確認
●実施内容
補助金交付に関わる申請書には、設置状況の写真を添付することとなっている。
●ポイント
実際に設置されたかを確認することができる。
工夫点⑤:配布時の説明会実施
●実施内容
高齢者世帯の取り付けについては、自治会役員、消防団員が協力した。
●ポイント
自治会、消防団がきめ細かに対応した。
(4)その他のポイント等
●その他の防火・防災対策
災害時の連絡体制:各世帯に防災無線の受信機が設置されており、発信機(ハンディタイプ)は各地区の自治会館等に設置されている。また、毛布・水・食糧等も各自治会の全世帯2日分が会館に備蓄されている。
地域巡回:消防団(4分団、8部)による火災予防のための地域の巡回を週2回程度行い、防火・防犯を図っている。
防災訓練:毎年9月1日の前の日曜日に各消防団と自治会とで、地区ごとにメニューを決め村内全体で実施されている。
次回は、地域のコミュニティによる綿密・丁寧な働きかけが大きな効果を発揮した「市内のほぼ全域をカバーする地域コミュニティによる共同購入活動(取組主体:金沢市婦人防火クラブ協議会(石川県金沢市)」を紹介します。 なお、本ノウハウ集は消防庁ホームページ(住宅防火情報)でもご覧いただけますので、参考としてください。〈リンク先〉http://www.fdma.go.jp/html/life/juukei.html